大学間連携共同教育推進事業は、専門教育の実践的改革を通じて、グローカル人材を育成することを大きな目標として掲げ、そのために、学外にマルチ・ステークホルダー型のNPO 法人を設立し、専門教育を本格的に社会化していくことを目指すものです。
京都には、地域に根ざしながら世界的に活躍する先進的な企業が集まっています。また観光業、伝統産業、ベンチャー企業に至るまで、幅広い産業が地域経済を支えています。さらに日本有数の大学の街なので、日本全国の若者や世界中の留学生が京都に集まってきます。これらのことから、京都はまさにグローバル+ローカルである「グローカル」な街の代表といえます。
しかしながら、京都で学んだ学生がその後も京都に留まる割合は三割程度と低く、京都企業は優秀な人材確保に苦心している、というのが現状です。
大学と企業を結んで行うインターンシップ等は盛んに行われていますが、大学の専門科目のもつ専門性や学問性を十分に活かした形なっているとは言い難いのです。現在、本格的な人材育成を行う上で、文系教育、とくに社会科学系教育にとっての大きな課題は、専門教育と現実の社会のニーズ、特に経済界の人材ニーズとの橋渡しです。つまり、アカデミックな専門教育の中にキャリア教育を本格的に組み込み、地域経済の将来を骨太に構想できる人材を育成することが、まさに必要であるといえるでしょう。
私たちは、公共マインドを持って地域社会に根付きつつ、グローバル経済に対応する冷静なビジネスマインドをもった人材を「グローカル人材」と呼んでおり、その育成方法を京都経済界とともに考えてきました。そして現在、「グローカル人材」という呼称は、京都経済同友会の組織する「京都における産学公連携就職支援のあり方についての調査・研究会」でも共有されるまでになりました。
グローカル人材を育成するためには、大学は専門科目の開発を大学外の人たちと、積極的かつ継続的に行う必要があります。京都という地域社会で活躍する人材育成のための専門教育開発は大学だけの問題ではなく、グローカル人材の育成という課題を共有した経済団体や地元企業とも連携しなければ、大きな成果につながっていきません。このような大学教育の改革の方向性を、われわれは「教育の社会化」と呼ぶことにしました。
大学間連携事業として、大学外の多様な人たちとの継続的かつ組織的な協働によって、養成するグローカル人材を明確にし、そのための科目設計そのものを進めていくことで、キャリア教育と専門教育とが結びついた人材育成プログラムを行うことができるようになります。
そこでわれわれは、社団法人京都経済同友会、京都商工会議所、京都経営者協会、公益社団法人京都工業会4つの経済団体とともに、多様な人材が関わるNPO 法人「グローカル人材開発センター」を設立し、経済界や行政とともに、PBL(Project Based Learning) をはじめとした実践的アクティブ・ラーニングに力点を置いた、専門教育プログラムそのものの開発支援に乗り出すことを決めました。大学教育を支えるセンターを大学内ではなく大学外に作ることで、地域社会が大学教育を支える形を、本格的かつ組織的に創り出そうとする取り組みです。
また、このセンターがあることによって、その成果は大学連携による教学改革にとどまることなく、経済界においても共有・検証され、そのフィードバックを得てさらなる革新を進めるきっかけになると考えられます。こうして教育プログラムがさらに改善され双方向型の改革となることで、大学と地域経済をともに改革することにつながっていくと考えられます。